機械式時計はその内部で、テンプと呼ばれる振動を続ける装置が持つ「等時性」という性質を利用して時間を刻んでいます。
　そして機械式時計の精度は、常にこのテンプの振動が正確さを保っていられるかにかかっています。
　よく時計のスペックに「28,800振動／時」等といった項目がありますが、これはテンプの振動のペースを表示しているものです。
　一方時計は常に衝撃や振動、温度変化などの外的なものの影響を受けながら時間を刻んでいますが、その外的要因の一つとして、時計の姿勢が変わるたびに変化する地球の重力も決して無視できないものとなっています。
　その対策として、テンプを含む調速装置全体を回転させて、重力の影響を相殺すべく考案されたのがトゥールビヨンです。
　トゥールビヨンを動かすには大変に複雑な機構と高度な技術が必要とされており、その繊細で複雑なメカニズムは、現代においてもいわゆる複雑時計の典型の一つとして、世界中の時計ファンを魅了しています。